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入試タイプで収入に差が?正直文系なら変わらないから推薦・AO使うべき

入試タイプによって年収に70万円の差が

AO・推薦入試の野放図な拡大で、大学生の学力低下という弊害も顕在化する。14年に発表された中教審の答申では、一部の大学で「AO・推薦入試が本来の趣旨・目的に沿ったものになっていない」と疑義を呈しており、政府も問題視するようになったことがわかる。学力不足の学生の増加は、大学の教育現場にも混乱を招き、AO・推薦入試に批判的な大学教員も増えた。

その1人である神戸大学経済経営研究所特命教授の西村和雄さんは、「AO・推薦入試は、学生の多様化が狙いだったはずなのに、『学力の多様化』を招きました。そして、学力の低い学生を増やす結果になっているのです」と批判したうえで、自らの経験について次のように話す。

データで見る教育格差「AO入試組と一般入試組の年収格差66万円」 メーカーの技術力も低下している | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

AO・推薦入試のあり方に危機感を抱いた西村さんは、学力考査を経て入学した卒業生とAO・推薦入試で入学した卒業生との能力を比較する追跡調査を行い、13年にその結果を発表した(図2参照)。


「45歳以下の男子就業者の平均年間所得では、前者が551万円だったのに対して、後者が485万円でした。AO・推薦入試組のほうが、70万円近くも年収が低かったのです。つまり、AO・推薦入試組の卒業生は、実務能力が低く、社会であまり評価されていないことを暗示しています」

その後、西村さんのもとには大学関係者から、「医学生なのにオームの法則も知らない」「小学校で習う理科の内容も理解していない」といった嘆きの声が、続々と寄せられたという。さらに、西村さんは14年、大手メーカー9社の協力を得て、20代を中心とする技術系社員約1200人の学力調査も行った。

変わる入試学力の担保が必要か

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では、現役の大学生はAO入試組をどう見ているのだろう。早稲田大学は現在、政治経済学部国際教養学部などがAO入試を実施している。同大学系属高校から同大学政経学部政治学科に進学し、20年3月に同大学を卒業した後、大手総合商社に就職する前田弘美さん(仮名)は、AO入試で入った友人について次のように話す。

「一般入試で入った学生よりも、むしろ優秀でした。まわりの学生より問題意識が高く、東南アジアでのボランティアに参加したり、海外でのインターンを経験したりするなど、行動力もありました。自分の意見を持ち、いつも議論の中心になっていましたね。帰国子女が多くて、彼女もその1人で語学が堪能でした」


同大学基幹理工学部の北原信之さん(仮名)は都内の有名私立進学校の出身で、「同じ高校からAO・推薦入試で慶大などに進学した友人は総じて優秀でしたね」と振り返ったうえで、「高校の後輩にはAO入試ではありませんが、推薦入試で東大医学部に合格した子もいました。脳科学オリンピックの日本代表に選ばれるなど、高校時代からズバ抜けて優秀なので、校内でも有名人でした。もし一般入試で東大医学部を受験しても、受かったでしょう」というエピソードを紹介してくれた。

一方で、AO入試の元祖である慶應義塾大学も現在、SFCをはじめ法学部などがAO入試を実施している。同大学法学部法律学科の松村誠さん(仮名)は、慶應義塾高校出身の内部進学者で、体育会系クラブに所属している。そのため、高校時代のスポーツの実績が認められてSFCAO入試で入った体育会の友人が多いという。

「彼らはメンタルが強くて、リーダーシップも取れるんですが、それだけじゃないんです。コミュニケーション能力に長けていて、女の子を口説くのも上手。ゼミでのプレゼンにも強いのでしょうね。それにスポーツ実績でのAOといっても、出身高校は地元での有名校で、いわゆる“地頭”もいい。そして独立心が旺盛な子が多く、ベンチャーで起業し、成功したAO入試組の先輩が何人もいますよ」

そう語る松村さんが学ぶ法学部の学生にも、AO入試で入った友人がいる。

 

退学率2~3割の底辺校のAO入試
慶大環境情報学部のAO入試の20年度募集要項を見ると、スポーツや芸術、文化など「さまざまな活動に積極的に取り組んだ」高校生が対象の「A方式」がある一方で、成績の「評定平均値が4.5以上」の高校生を対象とした「B方式」、世界共通の大学入学資格である「国際バカロレア資格を取得、もしくは取得見込み」の高校生を対象とした「IB方式」などもある。AO入試でも、学力で評価される余地が相対的に大きいのだ。


それに、人気のある難関大学なら、AO入試といえども、競争率も高いはずなので、受験生の学力レベルも、自然とアップするのだろう。前出の北原さんによれば、「難関大学AO入試の場合、倍率が高く、試験対策をばっちりしたのに、落ちてしまった高校の友人もいました。一般入試とは試験の内容が違うわけですが、難度はさほど変わらない」という印象なのだそうだ。

難関大学にとっても、AO入試には利点がある。それは「実質1校専願が多いため、優秀であるだけでなく、その大学を第一志望とする学生を、早めに確保できることです」(石渡さん)。その効果は、入学後の学業や学生生活の充実度に表れる。たとえば、18年5月時点で早大生の退学率は、一般入試組が3.3%だったのに対して、AO入試組が4.8%とやや高かったが、慶大生の退学率は、一般入試組が3.2%だったのに対して、AO入試組がわずか1.9%。安易に学生を受け入れている底辺校のAO入試組の退学率が、2~3割もザラなのと比べると、現行の難関大学AO入試は一定の成果を収めつつあるといえそうだ。

AO入試の拡大は、受験界にも大きな影響を与えている。大学予備校大手の河合塾進学研究社は、高校生向けのAO入試対策も積極的に行っている。その理由について、同社の首都圏現役生事業部調布現役館チーム館長の綾部欽一さんは「AO入試ならたとえ不合格になっても、一般入試で同じ大学に再びチャレンジできます。受験が年1回だった時代に比べれば、受験のチャンスが2回あるのは、とてもメリットが大きいのです」と語る。

 

確かにAO入試は、面接や小論文の対策といった、学科試験とは別の試験対策が必要なので、受験生の負担も大きい。「しかし、一定以上の学力を備え、志望する大学が決まっているなら、受けてみる価値は十分にあります」と綾部さんは強調する。

21年度には、大学入試制度のさらなる変更も待ち受けている(図5参照)。現行のAO入試は「総合型選抜」、推薦入試は「学校推薦型選抜」と名称が変わり、いずれの選抜方法でも、調査書などの出願書類だけでなく、「各大学が実施する評価方法」、あるいは「大学入学共通テスト」も取り入れ、学力重視へとシフトする。ということは、学力の高い受験生は、AO型入試でも有利になるわけだ。

受験生の現役合格志向が強まるなか、中堅クラス以上の大学では、AO型入試が選択肢の1つとして受験生の人気を集め、難度もアップしそうだ。その半面、底辺クラスの大学では、退学者を大量発生させるAO型入試の実態は変わらず、わざわざAO入試で進学するのにどれだけ意味があるのだろう。どうやら「大学の二極化」はAO型入試でも進んでいくようだ。

 

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